ひょう剣の魔術師。 虹彩の魔術師(こうさいのまじゅつし):遊戯王カード考察

ロードス島戦記

ひょう剣の魔術師

右胸に青の紋章が刻印されている。 の造形魔導士で、その実力は「」内でもトップクラスである。 すぐにを脱ぎ出す悪癖持ちで、無意識に服を脱いでいることが多い。 いつの間にか裸体の上半身になっており、その度に突っ込まれる。 頭は切れるが口は悪い。 これが原因でナツと喧嘩したり、を泣かすこともある。 好きな物は面白いことで、嫌いなものは。 作者曰く一応キャラ。 原作では物語初期のころにを吸っていた。 (アニメでは最初から吸っていない。 ) お酒には弱い。 幼い頃にの襲撃で故郷を滅ぼされ、唯一生き残ったところをに保護される。 その後はと共にウルを師匠として魔導士の修行に励み、ウルとデリオラの死闘を見届けた後、師の言葉に従い西の国を目指していた所「」に辿り着く。 ウルの娘であるのこともウルに聞かされていた。 なお、「妖精の尻尾」の所属は主要メンバーの中で一番早い。 ナツとは幼少時からいつも張り合ってばかりしているが、お互い全く毛嫌いしているというわけではなく、戦闘時などでは協力して戦っている。 敵として対峙したはグレイに惚れてフェアリーテイルに入る。 ジュビアがグレイに惚れていることに気付いていないと思われていたが、編でジュビアの気持ちに気づいていることが判明した。 フェアリーテイルの解散後は 二人で暮らしていた(途中でへの潜入捜査のために無断で家を出た)。 アニメオリジナル回ではジュビアとユニゾンレイドを決めたことがある。 父親のとの戦い後、滅悪魔法を受け継いで 氷の(デビルスレイヤー)の力を得た。 スピンオフ漫画「TALE OF FAIRY TAIL ICE TRAIL 〜氷の軌跡〜」では主人公として、ウルの死後、妖精の尻尾に加入するまでが描かれている。 氷の造形魔法 盾(シールド) 八方に広がる花のような形状の盾を造り出す。 広範囲を護ることができる。 槍騎兵(ランス) 手先から無数の氷の槍を造り出し敵を貫く。 床(フロア) 辺り一面の足場を凍らせる。 大槌兵(ハンマー) 巨大な氷のハンマーを作り上げて落下させる。 牢獄(プリズン) 氷の檻を造り出し閉じ込める。 戦斧(バトルアックス) 氷の斧を造り出す。 城壁(ランパード) 氷の壁を造り出す。 飛爪(ひそう) 氷の爪のついた鎖を造り出す。 大鎌(デスサイズ) 氷の大鎌を造り出す。 戦神槍(グングニル) 氷の大槍で相手を貫く。 海中においても有効。 氷欠泉(アイスゲイザー) 地面から大量の氷を間欠泉のように噴き出させる。 氷雪砲(アイスキャノン) 巨大な大砲を造形し強烈な砲撃を放つ。 氷聖剣(コールドエクスカリバー) 身の丈を超える氷の大剣を振りかざす。 氷魔剣(アイスブリンガー) 二対の氷の剣で十字に斬撃する。 氷刃・七連舞(ひょうじん・ななれんぶ) 氷の刃で敵を切り裂く連続攻撃。 氷の滅悪魔法 氷魔の激昂(ひょうまのげきこう) 口から冷気を放つ。 広範囲攻撃。 氷魔零ノ太刀(ひょうまゼロノタチ) 悪魔の氷で造った太刀で居合い斬りを放つ。 氷魔零ノ破弓(ひょうまゼロノハキュウ) 悪魔の氷で造った弓矢で相手を貫く。 氷魔零ノ破拳(ひょうまゼロノハケン) 悪魔の氷で造った手甲を両拳に纏い、相手を殴り飛ばす。 エドラスのグレイ CV:中村悠一 アースランドの平行世界「」におけるグレイ。 本名は「 」。 氷の造形魔法を扱うアースランドのグレイとは対照的に で、いつもかなりの厚着をしている。 性格もさほど大きな違いはないように見えるが、アースランドのグレイに比べると若干おっとりしており気味なところがある。 エドラスのに惚れているが、いつも嫌がられている(とはジュビアを巡る恋のライバルらしい)。 またエドラス側のとはとても友好的と、何もかもが逆になっている。 関連イラスト グレイはしょっちゅう脱いでいるが、左額(リオン戦)と右脇腹(ウルティア戦)の傷を書き忘れやすいので注意。

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ロードス島戦記

ひょう剣の魔術師

「……小僧が生意気言いおって!」 名指しされた四十代半ばの中年男性、スルタン少佐は戦車の中にいた。 戦車に乗りこんでいる理由は前線で自ら指揮をとるわけではない。 作戦は最初から兵たちに叩き込んでいるからその必要はなかった。 理由は一つだ。 スルタン少佐は生来根性が据わっておらず、ただ『一番安全な場所だから』という軍人とは思えぬ魂胆で乗りこんでいる。 無理矢理車内に作ったシートの上でふんぞり返るだけで戦車の操作などできない。 それもそのはずで、スルタンは戦功を立てて少佐の地位に上りつめたわけではない。 賄賂と父親から譲り受けたコネを駆使することで少佐に任命されただけの、ただの汚職軍人である。 しかし自身では己を大人物であると過大評価しているため手に負えない。 ザイドが守る町での略奪行為の発端も、『命をかけて日々市民のために戦っているのだから財産全てを自分に提供して当然』という厚顔無恥な発想だった。 「さっさと町に向かって撃ってしまえ! 町の奴らを人質にとればガキはこちらに寄ってくる! その後作戦通りに兵が動けば終わりなんだ!」 「はっ!」 もっともスルタンの部下も部下で総じて恥知らずであり、彼のお零れに預かるためなら町の人間を一人や二人、あるいは全滅させるぐらいしてしまっても構わないという外道である。 故に砲撃主は躊躇わない。 どれだけ戦場という現場でスルタンが無能や卑しさを晒そうとも、彼が軍内部で保身に長けた人間であり、得意の汚職で更に上の地位に行ける可能性が残っているのであれば、部下もその尻馬に乗っかりたいというのが本音である。 つまりは上も上、下も下でこの国の軍は腐り果てていた。 その腐敗が、『砂漠の町』に惨劇を呼び込もうとしていた。 ズンッ、と大地が震える。 町の入り口手前の地面が吹き飛んだ。 砂漠の乾燥した砂が一気に舞い、町の中へと吸い込まれていき野次馬の集団に直撃する。 突然砂嵐に見舞われた町の住人は悲鳴をあげる。 そこでようやく皆ここが命を落としかねない場所であることを思い出したかのように我先へと逃げ始めた。 リュウイチと共に屋根の上で観戦していた野次馬も町の奥へと逃げ始める。 (やはり戦車砲を使い始めたか) これがディルのときと同じパターンだ。 歩兵で勝てなくなれば、兵器で一気に押し切ってしまう。 たった一人の英雄しかいないのならば、その英雄がカバーできなくなる数の兵器を用意すれば良いだけの話だ。 今のは威嚇ではない。 完全に当てる気で発射されたものであることをリュウイチは理解している。 「ふざけるなスルタン! なんで町の連中を巻き込む!」 少年、ザイドが戦車の上に昇って何やら叫んでいる。 当然返事など返って来ず、二台の戦車は気絶させられた歩兵を無視して町へと進軍する。 キュルキュルと動き出したキャタピラに気付いたザイドは戦車を直接殴り始める。 だが効果など毛ほどもなさそうな様子が見ているだけのリュウイチにすら伝わってくる。 (完全なスピードタイプの『武術』の使い手か。 ならば戦車の相手はきつかろう) ザイドは速さに長けた力の持ち主であるらしく、鋼鉄の塊である戦車をどうにかすることはできないらしい。 ザイドとは真逆の、完全なパワータイプであったディルならば戦車を下から持ち上げて投げ飛ばすこともできただろう。 ディルはその並々ならぬ腕力で、かの暴動の際には町を守っていたのだから。 しかし今この場にいるのはディルではなく、その孫のザイドだ。 そのザイドがどうすることもできないのでは、あと数分で確実に戦車が町を蹂躙するだろう。 (やれやれ……本当にディルの時と同様になったな) ディルとの出会いも、こうして迫りくる軍隊をどうにかする所から始まったのだ。 もっともディルのときは軍隊の規模はこの十倍以上だったのだが、そんなことを比べてもしょうがない。 懐かしい記憶とのデジャブを感じながら、リュウイチは屋根の上から飛び出す。 「む?」 だがその前に、リュウイチはある者の存在に気付く。 海の波が引いたように消えていった人の群れに、付いて行っていない人間がいた。 位置は町の入り口、おそらくは人垣の一番前に居たのだろう。 見た目はうら若い少女で、ザイドと同じ褐色肌で年はザイドよりも二つ三つ上に見える。 そんな少女が足を押さえて蹲っていた。 町の住人達はわき目も振らずに走っているため他に気付く者はいない。 (これはいかんな) このままでは戦車の砲弾が直撃しかねないと判断したリュウイチは、登ったときと同様に一回の跳躍で家屋の屋根から跳び、見事に少女の近くに着地した。 「大丈夫か?」 「え、あ、は、はい」 いきなり現れた変わった姿の男に驚いたようだが、少女は取り乱さず素直に頷いた。 「足を挫いているようだな。 立てるか?」 「……ちょっと痛いです。 変な風に転んじゃって。 あはは……」 少女は笑っているが、無理をしているのが見え見えで顔色は青く額の発汗も不自然なほど多くなっている。 「どれ、俺が背負って」 「あ、結構です! 私ここに残りたいので!」 「む?」 体調の割にはあまりに元気よく、そして慌てて断られたのでリュウイチは意表を突かれた。 すると少女はまた大声を出す。 「私はあそこにいるバカな男の子の義姉なんですけど、あれのことが心配でここに来て、いつも勝てるからって危ないからって止めたんですけど聞かなくて! で、私の忠告した通り今日は負けそうでしょう!」 「ああ、そうだな。 旗色は悪い」 まくしたてる少女は町を守る英雄が不利ということがわかっていているようだ。 ならば何ゆえここに残りたいというのかリュウイチは不思議でならない。 「町を守れる唯一の人間の窮地ならば、ここは急ぎ逃げるのが筋ではないか?」 すると、薄く笑いながらはっきり言い返された。 「あのバカを残して死ねませんよ! 私の本当の家族は死んじゃったし、あいつは可愛くないですけどあれでも一応家族なんで! ピンチのときは一緒に居てあげたいですから!」 「……勇ましいな」 まだ成人してはいない年齢で毅然とした表情で、決死の覚悟を固めるなど誰にでもできることではない。 もっともこの年頃の少女がそんなことができてしまうのは悲しい事実である。 いちいち自分の生死を考えなければならないのは、この国の治安が悪い証拠だ。 少女は自分の思いを吐露すると、はっと何かに気付く。 「あ、それより外人さんこそ早く逃げて下さい! 私はこういう銃弾とか飛んでくるの慣れてますけど外人さんは違うでしょう?」 「いや俺は、」 おそらく少女よりも圧倒的に戦火に身を置いているから平気だ。 そう言いかけるも、初対面の少女にそんなことを打ち明けている場合ではないことを思い出す。 とにかくこの少女をどうするべきかと視線を彷徨わせていると、ふと視界の端にあるものが映った。 約二十人余り。 その一部、五人ほどが倒れたまま、しかし体勢を整えてザイドに向かって銃を構えている。 (なるほど、最初から歩兵たちが勝てないことを織り込み済みか) 町の噂ではスルタンは何度もザイドによって退けられている。 ならばザイドも十分に歩兵には負けないという意識を植え付けられている。 逆に考えればスルタンも歩兵が役に立たないことは承知している。 ならば歩兵を数人ほどひっそりと近付いて来させ、倒された人間の中に紛れこませる。 そしてやられた演技をして騙しうちを仕掛けることのほうが有用だと悟ったのだろう。 ザイドはスピードが異常に発達しているだけで肉体的強度は戦車の対処を見る限り常人レベルだ。 魔術師という特殊な分野に属する人間といえど、何の備えもなく銃弾に当たれば命は落とす。 (一応理には適っているが、見破られた時点で全く役に立たなくなる策であるし相手が素人だからこそ通じた戦法だ。 おそらくスルタン少佐とやらは執念深いだけで兵法には疎いのだろう) さすが小悪党というだけあって、指揮官の実力はてんで冴えていない。 しかしザイドが気付いていない以上、今頃してやったりと油断しているのだろうか。 冷静に分析していると、リュウイチの外套が少女に引っ張られて意識を戻される。 そういえばディルの伴侶だった女性と会ったことがあるが、確か彼女もこんな風に自分の身は顧みず、しかしディルのことは過剰なくらいに心配していた。 そして今ザイドの家族と名乗る少女が、他人である自分を気遣っている。 「なにからなにまであの時と同じ、か」 ふとリュウイチは無表情を柔らかくする。 何から何まであの時の再現だと思った。 少女はキョトンとしているが、それは置いといてリュウイチは尋ねる。 「あの少年はお前の家族だったな?」 「は、はい。 そうですけど……」 「次からは止めてやれ。 中途半端な魔術師というのは一番危険だ」 「え? まじゅつし?」 疑問符を浮かべる少女を、リュウイチは戦闘態勢に入る。 その異界を想わせる特別な衣装、その上に羽織った青い外套。 その間に片手を入れ、一つの小さな剣を取り出した。 鍔も鞘もなく、ただ黒鉄で拵えた柄があるだけの『ダーク』と呼ばれる、刃の長さがたったの二十センチ程度しかない短剣である。 それはリュウイチが持つ一振りの剣。 千の魔剣聖剣神剣を操ると言われる『剣帝剣聖』の剣。 リュウイチはその刀を持って、前方に放り投げた。 「やれ。 『雑兵殺し ぞうひょうごろし 』」 すると、その剣は増えた。 全く同じ大きさの剣がなんの脈略もなく分身した。 奇しくも奇襲を仕掛けようとしている兵士たちと同じ五本、まるで最初からそうありましたと言わんばかりに自然にそこに在った。 そして増えるばかりには終わらない。 適当に放られていたはずの、五本に増えた短剣が突如加速する。 すばしっこい鳥のように機敏に動き始めた短剣たちは、ザイドを狙っていた兵士たちの銃に突き立った。 兵士たちは驚き、腰を抜かす。 思いもしなかった方向と方法で攻撃されると同時に、兵士たちは潜めていた気配を露わにした。 今大人しく屈んで砂に紛れている者など一人もいない。 隠れていた兵士全員を炙り出したのを確認すると、リュウイチは少女に言う。 「ああ、ゆっくりでいいからできれば逃げておいてくれ。 砲弾は全て止めるが、万が一ということもある。 お前の家族は後から俺が連れて行こう」 「は、はい……?」 目の前で剣が飛んでいき分身した、という口に出すと曲芸にしか聞こえない光景を目撃した少女はかろうじて頷く事ができた。 リュウイチは彼女の心情をあまり理解せず、満足げに頷き返した。 しかし無表情だが。 「さて、行くか」 同時にリュウイチは三度目の、異常跳躍。 町の入り口から、一気に戦火の中心へ飛んでいく。 時間にして一秒あるかないか。 たったそれだけの時間で、リュウイチは戦車の上にいた。 より正確に言えば、ザイド・セファルディムの真横に。 「な、なななななななな!」 「む、どうした? 顎が外れんばかりに口が開いているぞ?」 「な、なんなんだお前! いきなり出てきて……どういうジャンプ力してんだよ! 今町から跳んできたろ!? 」 まだ変声期を迎えていない甲高い声で叫ばれる。 鋭そうな八重歯を覗かせながら、詰め寄られ、わけがわからずリュウイチは大いに首を傾げた。 「この程度の跳躍ならばお前にもできるだろう、そう驚くな。 それに今のは武術ではなく、ただの重力の緩和による跳躍だ。 大したことはない」 「何言ってるのかサッパリだけど、オレ以外であんな風に跳べるやつなんか爺さんだけだったよ!」 「そうか、やはりお前がディルの孫で相違ないか。 しかしあれとは違って、お前は体躯が小さいな。 ああ、齢 よわい のせいもあるのか。 だから特段成長が遅いわけでもないということか」 「は、はあ!? 」 ザイドの顔が林檎のように赤く染まり、口をパクパクと動かす。 しかしリュウイチはザイドの爪先から頭の天辺まで見定め終えると、すぐに視線を外して足元の戦車に声を投げかけた。 「スルタン少佐というものはいるか? 今すぐ隊を引いてはくれないか? このままで死者も出かねんだろう」 キャタピラ音にも負けないように腹の底から声を張り上げるが、戦車からの返答は無い。 「無視されたか」 「一体何しに現れたのかわからねえけど、あんた馬鹿か! スルタンが説得したぐらいで引いてくれるわけないだろ!」 ザイドに胸ぐらを掴まれるが、リュウイチは眉一つ動かさない。 「言ってみねばわからんだろう。 だがしかし、このままではまずいな」 「まずいなで済むか! このままだとまた砲撃されて町が壊されるだろ!」 「……そうだな」 元よりその可能性はあったのだから、ザイドはあんな余裕を見せつけるような戦い方をせずに真っ先に戦車を潰す方法を考えているべきだった。 今まで戦車を使われたことがなかったのか、完全にザイドは戦車の対処法がわからないらしい。 しかしザイドは国が国なら学校に通っているだけの少年に過ぎないのだから戦局を読み間違えたところで仕方がないとも言える。 (む) その時、もう一台の戦車が砲身の角度を調節しているのにリュウイチは気付く。 町へ向けて弾道の角度を調節しているのだ。 しかも砲身をより上に向けたということは、狙いは入り口付近の民家ではなく町の中心よりということになる。 今まさに怯え逃げる人々が集まっているだろう地点だ。 (我欲を満たすだけの道に走った人間は他人の命など重んじることはしないか) 一つため息をつきながら、リュウイチは襟を掴んだままのザイドに向き直る。 「お前の奮闘を無にするようで悪いが、ここは俺が処理させてもらうぞ」 リュウイチの口ぶりは実にあっさりとしていた。 猛進する鉄の塊など何でもないことのように言う。 端的なリュウイチの言葉にザイドが何かリアクションを見せる前に。 再び戦車の砲が火を噴いた。 同時に再びリュウイチは剣の名を呼ぶ。 「『雑兵殺し』。 やれ」 戦車から発射された弾は着弾した。 呆気なく、弾は炸裂し、轟音をまき散らした。 今度は地面に向けてではない。 正確に町へと発射された。 町を蹂躙せんと、砲撃がなされた。 しかし、町と戦車の間に立ち塞がるものがあった。 「ぁ…………!」 ザイドは町から離れた戦車の上でソレを目撃し、自然とリュウイチの胸ぐらから手を離した。 「なにこれ……」 ザイドの姉と名乗る少女、アミラは町の入り口という特等席でソレを目撃した。 「お、おい……どうなっとるんだコレは?」 スルタンは戦車の中で震えあがった。 今まさに戦車の砲弾から町を守ったのはリュウイチでもザイドでもない。 それは剣の群れ。 眩暈を催すほどの夥しい数の短剣。 それが今、町を守る大滝のように立ち塞がっている。 巨大な磁石を中空に浮かせて引っ付かせているように、無造作に剣が折り重なって刀身、柄、鍔が剣と剣の隙間から見え隠れしている。 防壁が不可欠であったから大量の短剣で代用した、とでも言いたげに剣は群れをなして折り重なっていた。 事実、町の入り口を通過しようとした砲弾は、その射線上で剣の群れに当たっていた。 ガシャンッと巨大なガラスが割れるような破砕音が当たりに響く。 だが、短剣の壁はそれでは全く揺るがない。 表面の何百本が爆発で砕かれ、爆風に焼かれても、壁の形は維持されている。 短剣の群れは、町の防御を完遂していた。 「エフィズル、という鍛冶屋が遥か昔にいてな」 戦車のエンジン音だけが響き渡る、沈黙に包まれた戦場でリュウイチは語る。 「この世界とは別世界に生きた偉大な鍛冶屋だ。 とはいえエフィズルの剣はこの世界で名を馳せている剣を模しただけとも言われている。 そこらの事情は語るに及ばないから語らんが」 いつの間にかリュウイチの手には、町を守っている剣たちと同じ形の短剣が握られている。 「今お前、スルタン少佐に知ってもらいたいのは、これはエフィズルが遺した第八十二作目の魔剣。 『雑兵 ぞうひょう 殺 ごろ し』。 特性は『増殖 ぞうしょく 』と『連係 れんけい 散在 さんざい 』。 この剣は万だろうと億だろうと兆だろうと限りなく増え続けることができる剣だ。 そしてその全てが本物だ。 全てを壊さぬ限り『雑兵殺し』は無くなりやしない。 いくらでも増え続けることができる。 そう、こんな風にな」 リュウイチは手にしていた一本の『雑兵殺し』をもう一台の戦車へ目掛けて投擲した。 そして、『雑兵殺し』をゆっくりと増殖させる。 一本から百本の剣山へと変わるのに一秒。 百本から万本の剣の河へと変わるのに一秒。 避けようのない百億の剣の濁流に変わるのに三秒もかからない。 リュウイチの前方が短剣で埋め尽くされ、戦車は何もできないまま呑みこまれる。 短剣の海に飲み込まれ、ゆっくりと剣に流されて行く。 「安心するといい。 お前の部下も殺しはしないし、戦車を壊すような真似はしない。 おそらくはスルタン少佐だろう。 中年の男だと思うが、目の前に広がる光景への焦燥のせいで、しわがれた老人の声にしか聞こえない。 それよりもようやく声を発したスルタン少佐と会話をする。 『これはなんだ! きさま化物か! 一体何なんだ! あの剣は何だ!』 「俺はリュウイチだ。 人からは『剣帝剣聖』などという大層な名で呼ばれている。 スルタン少佐は意外と魔術界の情報に詳しいのかもしれない。 「ああ、知っているのなら話は早い。 俺の剣の力を見ておくといい」 そう言ってリュウイチは短剣の河の一部、数本の『雑兵殺し』をこちらに飛ばす。 砂の上を虫のように這う短剣たちは素早く戦車の下に潜り込む。 『ひ、』 スルタンが息を呑んだ瞬間、『雑兵殺し』は爆発的にその数を増やし、すぐに万の単位へと達した。 戦車の下で増加した短剣の群れは、戦車の隙間に入りきらなくなり、車体の前半分を大きく持ち上げ始める。 『ひ、ひいいいいいいいいいいいいいいいいいい! やめてくれえええええええええええええええええええ!』 短剣の塊が支えとなって段々と戦車は段々と垂直になっていく。 その中でスルタンと癇癪を起こした子供のように悲鳴を上げた。 もはや幾らキャタピラを回しても進むことはできず、いくら砲を使おうとも空の他に照準を合わせる的 まと はない。 いわばスルタンの戦車は完全に無力化されていたのだ。 その直立した戦車の上で、リュウイチは器用にバランスを保っていた。 「これに懲りたのならばこの町から手を引け。 金輪際悪心を持って立ちいらぬようにな。 破れば俺がまたお前の相手をさせてもらおう」 『わかった! わかったからもう止めてくれえええええええええええええ!』 ほとんど泣き叫ぶようにスルタンは肯定した。 本当にこちらの意図が伝わっているのか、その恐慌状態から不安になるが恐怖が刻みつけられたのならば、この後すぐに精神的に復活することはないだろう。 ならば結果は上々。 「だ、そうだ」 戦車を傾かせるのは止めたものの、未だに持ちあげているリュウイチはザイドに水を向ける。 ザイドは放心半分、呆れ半分といった複雑な顔をしていた。 「…………なんでもいいけど…………あんたのほうが悪役になってるぞ」 「そうか?」 リュウイチはどこまでも無表情で、首を傾げた。

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冰剣の魔術師が世界を統べる〜世界最強の魔術師である少年は、魔術学院に入学する〜(御子柴奈々)

ひょう剣の魔術師

「おぉ……ここがそうか……やはり、でかいな」 門の前に立つ。 俺はやっと辿り着いたのだ。 あの、アーノルド魔術学院に。 世界で魔術を学んでいる者ならば、この学院に入学することは夢であり、通過点でもある。 世界で活躍している魔術師は、そのほとんどがこのアーノルド魔術学院出身である。 そのため、偉大な魔術師になろうとする者はここへの入学を望む。 そうして俺、レイ=ホワイトもまたこの学院に入学することが可能となった。 試験はまぁ……俺は実は免除されての入学だ。 決して裏口入学ではないが。 実際の試験は筆記と実技の両方らしいが、この学院の基準はかなり高い。 それこそ貴族も多く、それ以外にも魔術師としては名家の子どもが数多く入学するからだ。 その中でも俺は、唯一の一般家庭出身の魔術師らしい。 母も父も、それに祖父も祖母もまた魔術師ではない。 家系に誰一人として魔術師はいないのだ。 稀に起こるらしいのだが、突然変異というやつだ。 俺はこの家系始まって以来の魔術を行使できる人間だった。 そうして俺は紆余曲折あって魔術師を目指すようになり、今に至る。 「いいことレイ。 つらい時は、帰ってきてもいいのよ」 「母さん。 大丈夫だよ。 俺だって、もう魔術師の端くれだ。 覚悟ぐらいは出来ている」 「そうなのね……立派になったわね」 「そうだな。 父さんも嬉しいぞ」 「お兄ちゃん! 来年は私が行くから! 待っててね!」 「あぁ。 もちろんだ」 今の家族の後押しもあって、俺はたった一人でやってきた。 田舎の家からたった一人で俺は……この学院に……! 実は途中で何度も道に迷ったのは秘密だ……。 そうして俺はこの門をくぐる。 周りからはチラチラと見られているが、そんなことは気にしていない。 うん……おそらく自意識過剰だろう。 それは間違いない。 グレーを基調とした真新しい制服に身を包み、長めだったこの青みかかった黒い髪も、入学に際して少しだけ整えた。 容姿も特に変な所は無いはずだ。 「ねぇ……あれって……」 「うん……噂のアレじゃない?」 「あぁ。 アレね」 「アレよ……間違いないわ……」 ヒソヒソと話し声が聞こえるが、そのまま歩みを進める。 「えーっと……道はこっちであっているのか?」 生徒手帳に付随している地図を見る。 この学院は本当に広い。 普通に歩いていれば迷ってしまいそうなほどに。 もちろん人の波に沿って進めば目的地には辿りつけるのだろうが、一応自分の頭でも把握しておきたい。 そうして立ち止まってじっとそれを見つめていると、後ろからドンッ! と衝撃がやってくる。 「チッ……気をつけろよ」 「すまない。 少し地図を見ていてな」 もちろんすぐに謝罪する。 今回は人が歩いている中で急に立ち止まった俺が悪いだろう。 素直に頭を下げる。 「ん? お前……まさか、レイ=ホワイトか?」 「おぉ! 俺のことを知っているのか? それは心強い。 田舎から出てきて知り合いもいないんだ。 これから仲良くやってほしい」 と、俺はその男に右手を差し出すも……。 バンッ! とそれは払い除けられてしまう。 「は……テメェ、この学院始まって以来の 一般人 《 オーディナリー 》出身だろう?」 「そうだが……何か問題でもあるのか?」 その男、加えて他の取り巻きもまたニヤニヤと俺を見つめる。 「分かっていないのか? ここでまともに生活したいなら、最低でも魔術師の家系が条件だ。 それこそ、貴族であることが望ましい」 「むむむ……? どういうことだ? すまない。 魔術師の世界にはまだ疎くてな。 詳しく教えてもらえると助かる」 「はっ……そんな面倒なことするわけねぇだろ。 ま、せいぜい頑張れや。 期待してるぜ、 一般人 《 オーディナリー 》よ」 そうして彼らはスタスタと歩みを進めてしまう。 俺としては早く友人をゲットしたかったのだが、こればかりは仕方がない。 相手にその気がないのならば、無理強いするのも悪いというものだろう。 「ね、君さ……」 「ん? 何か用か?」 「その、話し声が聞こえてきてさ……あ! その前に自己紹介ね。 私はアメリア=ローズよ」 「ミス・ローズ。 これはどうも。 俺はレイ=ホワイト。 気安くレイで構わない」 「私もアメリアでいいわ。 同じ新入生だしね」 「そうか。 ならよろしく頼む、アメリア」 「さて、と。 ここで立ち止まっているのも、よくないし。 話しながら行きましょう」 「あぁ助かる」 俺はアメリアと共に歩みを進める。 アメリア=ローズ。 長い紅蓮の髪が特徴的で、さらに 灼眼 《 しゃくがん 》のその双眸はどこまでも透き通っており、純粋に美しいと形容すべき容姿をしていた。 また、女子生徒の制服は赤を基調としており彼女のその容姿には良く似合っている。 それに見るからに活発そうなのはすぐに理解できた。 プロポーションもよく、女性にしては背が高い。 俺が180センチ弱だから……170センチはあるのか。 魔術の発達により、人はその体にも影響を受けるのか、昔よりも平均身長は高くなっている傾向にある。 それを踏まえても、彼女は高い方だろう。 スラッとした身長もそうだが、何よりもその立ち振る舞いに気品というものを感じる。 そういえば、ローズという名前には聞き覚えがあるが……。 「あなたこの学院始まって以来の 一般人 《 オーディナリー 》らしいわね」 「そうだ。 突然変異の一種らしくてな」 「へぇ……そうなんだ。 これから困ったことがあったら、何でも相談してね」 「それは助かるが、アメリアは親切だな」 「ちなみに私のこと、知らない? 実は有名人なんだけど……?」 「いや申し訳ない。 君のことは先ほど初めて知った。 浅学で申し訳ないが、教えてもらえると助かる」 「そうなんだ。 でも、 一般人 《 オーディナリー 》に浸透していないのは当然かもね。 えっと……で、魔術師の中に貴族がいるのは知っているよね?」 「あぁ」 「その中でも三大貴族って聞いたことない?」 「! ピンときた。 まさか、君の家がそうなのか?」 「そう。 ローズ家は三大貴族筆頭。 ちなみに私はこの学年の首席よ」 「おぉ! そんな英傑とこうして相見えることができるとは……サインをお願いしても?」 「いいけど……レイって変わってるよね……」 「そうか? まぁ、とりあえずこの色紙に頼む。 あと妹の分も……」 「意外と主張激しいわね。 ま、いいけどね。 悪い気はしないし」 そうして俺は持参していた色紙にサインを書いてもらう。 こんな時のためにサイン色紙とカラーペンを忍ばせていてよかった。 「はい。 どうぞ」 「おぉ! すごい! 達筆だ!」 「まぁ一応有名人だからね〜」 アメリアも満更でもないようで、少しだけ鼻が高い様子だった。 「それにしても、あなた……大丈夫なの?」 「ん? 何がだ?」 「さっき、嫌がらせされてなかった?」 「? いや別に。 ただ挨拶は拒まれたがな。 いや、都会の挨拶はなかなかに難しいな。 やはり俺の作法が間違っているようだな……うん、勉強になる」 「レイが気にしていないならいいけど……くれぐれも気をつけてね」 「何がだ?」 「この学院は派閥争いが激しいの。 それこそ、どの派閥に所属するかで卒業できるかどうかが決まるように。 だから三大貴族は特に優遇されるの。 自分で言うのもなんだけどさ。 そんな事情だから、 一般人 《 オーディナリー 》のあなたはきっと……大変だと思う」 「ま、そんなことはいいさ。 派閥だろうが、なんだろうが、俺はこの学院生活を謳歌したいと思う」 「前向きね。 それとも能天気なだけかしら?」 「ふ……後者に一票だな」 「ふふ、何それ! あはは、ちょっとあなたのこと気に入ったかも」 「そうか? 田舎から出てきて友人はまだいない。 アメリアが学院での初の友人になってくれると助かる」 「そう言われると、ちょっと照れるけど……そうね。 これから友人としてよろしく」 「あぁ」 今度はがっしりと握手を交わす。 「そういえばレイは知ってる?」 「ん? 何をだ?」 「 冰剣 《 ひょうけん 》の魔術師の噂」 「……いや存じないな。 詳しく聞いても?」 「数年前に現れた、天才魔術師。 特に氷魔法に長けていてついた二つ名が、 冰剣 《 ひょうけん 》の魔術師。 既に、世界七大魔術師の一人とも言われているわね。 曰く、氷魔法の真髄を極めているとか……」 「……そいつがどうかしたのか?」 「実は今年の新入生の中にいるかもっていう噂なの。 でもありえないよね。 そんな人がわざわざ学院に来るとは思えないし」 「……そうだな」 そうして俺たちはその後も適当に雑談を繰り広げながら、入学式が行われる講堂に向かうのだった。

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